立命館大学に進学したのは、高校の先輩から自由で面白い大学があるとすすめられたからです。当時からプロを目指していたものの、社会について学ぶことはダンサーにとって重要なことだと思い、産業社会学部を受験することに。合格とほぼ同じタイミングでカナダのバレエ団への入団も決まり、迷った末、両立することを選びました。
前期中は朝から夕方まで授業を受け、後期はカナダに渡りダンサーとして舞台に立つ。18歳から始まった二重生活はこなすだけで精一杯でしたが、今振り返っても貴重な時間だったように思います。全国から学生が集まり、留学生もいる大きな組織に身を置いたことで、バレエだけでは知り得なかった多様な考えに触れることができました。
本が好きになったのも大学生になってから。課題に必要な本はどれも難しい内容でしたが、読書によって世界が広がっていく感覚は新鮮なものでした。一見関係のない事柄でもどこかでつながっていたり、当たり前に通り過ぎていた事柄でも掘り下げてみると面白かったり。義務教育でもなければ労働でもない。興味の赴くまま自分なりの勉強法を追求できたのは、大学という自由な環境があったから。こうした学生時代の気づきは、作品を分析し踊りとして表現する上でのヒントにもなっています。
同級生との交流は今も続いていて、中には同じようにヨーロッパを拠点にしている友達もいます。卒業してから出会った人が立命館大学出身だということがわかり、お互い驚いたこともあります。海外にいるから尚更そう感じるのかもしれませんが、すでに仲の良い相手であっても、さらに距離が縮まる気がして。日本を離れても、あの自由な校風を共有できる人が近くにいると思うと、嬉しくなりますよね。
クラシックバレエからキャリアをスタートさせた私がコンテンポラリーの方向に舵を切った時、その決断を惜しむ声は少なくありませんでした。私自身、新しい道に進むことに迷いがなかったわけではありませんが、勇気を持って踏み出したことが、今のダンサーとしての自信につながっています。思えば、変化を恐れない母校の姿に影響されたのかもしれません。歴史のある大きな大学なのに、成長のスピードが速くて、うかうかしていると手の届かない存在になってしまうのではと心配なほど。置いてきぼりにならないよう、私も挑戦しなきゃと思わせてくれました。
校友のみなさんの存在も、良い刺激になっています。会報『りつめい』が楽しみで、様々なフィールドでの活躍を取り上げた記事を読むと誇らしい気持ちになります。まだ顔も名前も知らない。でも、校友というひとつの大きな共通点でつながっている先輩や後輩、同級生が世界に36万人もいるということは、本当に心強い。私もその一員として、みなさんの励みになるような活動を続けていきたいです。