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あの頃の風景

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堀川 雅道さん
1976年卒/理工学部電気工学科
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2017.7.31
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あの頃の風景

仁とF森との帰り道、校門を抜けようとすると、前から拓ちゃんがボールペンを一本だけ持ち、やって来る。
拓ちゃんは吉田拓郎にそっくりで、髪型も同じで、皆から拓ちゃんと呼ばれていた。
「授業に行くの?」と聞くと、「名前だけ書きに来た」と言う。
「授業を受ける格好じゃないね」とからかうと、「単位が足りなくて」と通り過ぎ、背中越しにボールペンを振ってバイバイする。
仁の部屋にF森と初めて行ったのは、入学して、少し経ってからだった。
お互いをまだよく知らず、手探りで少しずつ会話をしていると、「スキンクリーム、無いか?」と隣人が拓ちゃんとやって来る。
「おー、あった、あった。ぶーち、これいいじゃん」と彼は、仁のブラバスの乳液を顔に塗りたくる。
「あっ、出し過ぎた」
「あ~、俺の十回分が」と仁が苦笑しながら、抗議する。
「じゃ、俺たち出かけるから」
「そう。拓ちゃん、部屋貸してくれる?俺のアンプ、調子が悪くて」と仁が言うと、拓ちゃんは「いいよ」と軽く承諾してくれた。
「ぶーち、ぶーち」と言いながら、彼等は去って行き、我々はいそいそと拓ちゃんの部屋に移動する。拓ちゃんの部屋にはデンオンの白木のレコードプレーヤーがあった。
例のターンテーブルがUFOのように飛んで行きそうなやつだ。
荒井由実の「ひこうき雲」を聴かせてもらう。
「これ、僕も持ってるけど、いいでしょ」と、姉と妹に挟まれた女系家族のおかまチックなF森が言う。
「いいね」と言うと、仁も嬉しそうな顔をして、何だかなごやかな空気が流れた。
ああ、自由で怠惰な学生生活が始まるのだ、と思った。

学食で昼食を終え、さて昼からの授業をどうするか、という相談をしていた。
相談するまでもなく、答えは決まっていた。
このメンツなら麻雀だ、あとはそれに対する正当な理由づけが欲しいだけだ。
コインで決めようと誰かが言う。
「いや、いや、それじゃ確率が高すぎる」と秀則が言う。
「コインが立ったら、授業に出よう」
皆笑う。
「駄目だ。ほんとに立ったらどうする」と秀則が自問する。
そして、「コインを投げて、落ちてこなかったら、出ることにしよう」と続ける。
それからコインを投げ、誰かがふざけて受け止めたので、実は落ちてこなかった。
でも僕たちは笑いながら、麻雀に出かけた。
こわいものはなかった。

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